髙橋長官会見要旨

観光庁の髙橋一郎長官の会見内容となります。

冒頭発言

(2023年7月の訪日外国人旅行者数について)

本年7月の訪日外国人旅行者数は、232万600人となりました。

2ヶ月連続で、単月200万人を超えました。

昨年7月と比べ約16倍、コロナ前の2019年7月と比べると、単月で78%まで回復しました。

また、中国を除くと単月で103%の回復となり、昨年10月の水際緩和以降初めて100%を越えました。

本年7月の出国日本人数は、89万1,600人となりました。

昨年7月(277,945人)と比べて約3倍、コロナ前の2019年7月と比べると54%の回復であり、少しずつ改善傾向が見られます。


質疑応答

(問)今月10日に中国政府が日本行きの団体旅行を解禁しました。訪日客数、消費額、それぞれ押し上げが期待されますが、この解禁について、観光業界への影響の受け止めや、コロナ禍前の水準に回復する時期の見通しについて、所感をお伺いします。
(答)

本年7月の訪日外国人旅行者数は、先ほど申しましたように232万人、2019年比、単月で中国を除くと103%と、コロナ前を超えるとともに、インバウンド全体の消費額は、本年4月から6月期で1兆2052億円、2019年比では95%となっており、堅調に回復してきていると考えています。

一方で、本年7月の中国の訪日者数の回復率は、単月で約3割にとどまっています。

このような中、コロナ前の2019年に訪日者数が最多であった中国につきまして、今月10日、日本への団体旅行の取り扱い禁止措置が解除されたところです。

インバウンドが全般的に回復傾向にある中で、今回の中国政府による訪日の団体旅行取り扱い禁止措置の解除により、中国からのインバウンドの回復がさらに進み、観光の活性化に繋がることを期待しています。

また、見通しということですが、中国市場においてはこれまで訪日団体旅行商品の取り扱いが禁止をされていたことから、中国の旅行会社に団体旅行商品を造成するための日本についての最新情報が不足していることや、日本のランドオペレーターとの繋がりが切れてしまっていることが課題であると認識しています。

このため、7月にJNTO主催の現地の旅行会社向けセミナーを北京、上海などで実施し、日本の地方部の最新観光コンテンツや、中国人団体客の受入ができる日本側のランドオペレーターの紹介などを行いました。8月22日には、広州で同様のセミナーを実施する予定です。

訪日旅行を扱う中国の旅行会社によると、造成される訪日団体旅行商品の多くが、8月末から9月以降の出発となる見込みであり、大型連休となる10月の国慶節の時期には、団体旅行の送客が本格化すると想定しています。

本年3月に閣議決定した新たな観光立国推進基本計画では、2025年までに訪日外国人旅行者数の2019年水準を超えること、また、訪日外国人旅行消費額5兆円の早期達成などを目標としているところです。

今般の中国による団体旅行の解禁により、本年7月はコロナ前の2019年比78%であった単月の訪日外国人旅行者数が、年内にもコロナ前の水準に戻ることも視野に入れて、受入環境整備の充実に努めるとともに、観光立国推進基本計画に掲げている訪日外国人旅行消費額の達成に向けて、力を尽くしてまいりたいと考えています。


(問)訪日客が増える一方で、観光業界では、人手不足や宿泊単価が上がっているという懸念の声が聞こえていますが、観光庁としてどのように対応していくのかお伺いします。
(答)

宿泊業をはじめとする観光産業では、観光需要の急速な回復にともない人手不足が顕著となっており、宿泊施設において稼働を落とさざるを得ないような状況も生じてきていると認識しています。

こうした状況が、宿泊施設の部屋数の供給減少を招き、結果として、宿泊価格にも影響を及ぼしている部分があると考えています。

内外の旅行需要回復に着実に対応するためには、まずは足元の人手不足の解消が重要であると考えています。

このため、観光庁としては、まずは宿泊業における就職説明会の開催や広報など、採用活動の支援を行いたいと考えているほか、人手をかけるべき業務に人材を集中的に活用するため、スマートチェックインの導入、あるいは配膳・清掃業務の合理化などを通じた、宿泊施設の効率的な運営を推進してまいりたいと考えています。

また、魅力ある宿泊施設への改修や、予約管理・設備管理などのデジタル化に対する支援などを通じ、観光産業の生産性や収益性の向上を図るとともに、こうした支援を行うにあたり、賃金水準の引き上げを事業者に求めていくなど、従業員の方々の待遇向上が図れるよう取り組んでいるところです。

こうした取組により、今後、観光産業における人材確保のための環境改善が進んでいくものと期待しています。


(問)7月の結果については、中国に関してはコロナ禍前の水準に至っていませんが、今回の中国人団体客解禁を受け、コロナ前の水準に戻るのかどうか、今後の見通しをどのように見てらっしゃいますか。
(答)

中国の旅行会社において団体旅行商品造成のための日本についての最新情報が不足していたり、ランドオペレーターとの繋がりが切れてしまっているといった課題があると思います。

その課題を解消するために、7月にJNTO主催の現地旅行会社向けセミナーを、北京、上海などで実施し、日本の地方部の最新観光コンテンツや中国人団体客の受入ができる日本側ランドオペレーターの紹介などを行いました。さらに、明日8月22日には、広州にて同様のセミナーを実施する予定です。

また、訪日旅行を扱う中国の旅行会社にお聞きしたところ、造成される訪日団体旅行商品の多くが8月末から9月以降の出発となる見込みであり、大型連休となる中国の10月の国慶節の時期に、団体旅行の送客が本格化すると想定しています。


(問)旅行客の増加による、オーバーツーリズムの課題に対してはどのように対応していくのでしょうか。
(答)

国内外の観光需要が、現在急速に回復しています。

この急速な需要回復にともない、多くの観光地がにぎわいを取り戻している一方、一部の観光地においては、混雑やマナー違反による地域住民の方々の生活への影響や、旅行者の満足度低下の懸念が生じているものと認識しています。

こうした地域においては、混雑状況を可視化すること、あるいは、比較的空いている時間や場所に誘導する取組、また、まちなかの掲示やSNSなどを通じたマナー啓発、といった受入環境の整備が進められているところであり、観光庁としてもこうした混雑抑制やマナー啓発などに取り組む地域に対し、広く支援を行っています。

具体的な取組としては、観光庁の支援のもとで、例えば北海道の美瑛町では、人気観光スポットの混雑状況をリアルタイムで配信するとともに、パークアンドライド駐車場を整備する取組を行う、あるいは、京都市におきましては、観光マナー啓発のためのデジタルサイネージ高札型看板や、観光バスの路上滞留を防ぐ看板を設置する取組などが行われる予定です。

また、地域もどのような取組が効果的か、大変悩んでいるという認識ですので、そうした観点も加えて更に申し上げますと、観光需要の適切なマネジメントや交通手段の機動的な確保を図るために、例えば神奈川県の箱根町においては、デジタル技術を活用した混雑状況の可視化に加え、混雑状況に応じて比較的空いている観光ルートをリアルタイムで提案したり、空いている施設のデジタルクーポンを発行して需要の平準化を図る実証実験を行うほか、北海道ニセコエリアにおいては、北海道運輸局が自治体、DMO、関係事業者と連携し、市街地とスキー場を結ぶシャトルバスを運行し、スキー客向けの交通手段の確保や渋滞の減少を図る実証実験を行うなど、地域とより連携した取組を積極的に進めてまいりたいと考えています。

また、地域住民の方々のご理解をいただきながら観光振興を進めるには、こうした混雑、マナー違反対策を進めるとともに、地域の自然、文化などの保全や地域産業の発展と観光振興を両立させる持続可能な観光地域づくりを進めることが大変重要であると考えます。

このため、観光庁では、こうした持続可能な観光地域づくりに継続的に取り組む地域をを優良モデルとして構築し、その取組を全国各地での普及に繋げるべく令和2年に策定した「日本版持続可能な観光ガイドライン」を活用したモデル事業を、10地域で実施しているところです。

また、旅行需要そのものの分散・平準化を図るために、「平日にもう1泊」キャンペーンや、日本各地の魅力を全世界に発信する「観光再始動事業」など、日本の地方に存在するさまざまな観光資源の発信を通じた全国各地への誘客促進の取組を集中的に実施しています。

地域の方々の声によく耳を澄まして、関係者と連携し、地域住民の方々と旅行者の方々の双方の懸念を解消し、続可能な観光の実現に向けた取組をしっかり進めてまいりたいと思います。


(問)今後、中国人観光客が増えることに対して期待感がある一方で、中国における景気がこれまでの勢いに比べ減退傾向であることや、日本以外の地域への旅行を選択する中国人観光客が増えているという話もある中で、期待だけではなく注視するといったことはありますでしょうか。
(答)

中国に限らず、日本が世界から選ばれる観光地であり続けるためには、また日本各地の地方部の魅力をしっかり広めて日本に来ていただくためには、全世界のお客様の動きにしっかり注視し、自分自身を磨き続けなければいけないと思います。

その上で、中国は韓国や台湾といった国、地域に比べますと、初めて日本に来られる、あるいはまだ来られたことがないという方々もたくさんいらっしゃり、非常に大きなポテンシャルを持っている国であることは、言うまでもありません。


(問)中国の団体客解禁によって、コロナ前の数字に年内にも達成するとのことですが、それは観光客数のみか、それとも消費額も含めてなのでしょうか。
(答)

訪日外国人旅行消費額につきましても、観光立国推進基本計画において、5兆円の早期達成を目標としていますので、この目標達成に向けて力を尽くしてまいりたいと思っています。

中国のお客様は、日本において大変単価の高い消費をされています。

団体旅行解禁は、消費額の増加についても大変前向きな動きだと考えています。 


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